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【第二弾 建築放浪旅(石川・岐阜)】
ライフスタイル
こんにちは、第一建築事業部の尾見です。
前回に引き続き、建築放浪の旅の記録、第二弾をお届けいたします。
初日に群馬・新潟を巡り、翌日は石川県金沢、そして岐阜県多治見へ。
金沢の澄んだ空気、多治見へ向かう車窓から見える山々、
ちょうど見頃だった紅葉が重なり、
まさに “建築と風景が溶け合う一日” となりました。

それでは、建築放浪旅2日目に出会った名建築の数々をご紹介します。
■ 石川・金沢
① 谷口吉生 氏 設計【鈴木大拙館】
静けさを「建築の質」として成立させた、谷口吉生氏の代表作。
空間を満たすのは装飾ではなく、光・影・余白。
“思索空間棟”へ足を踏み入れた瞬間、
外界との距離がスッと断ち切られ、
時間の流れがゆっくりとほどけていくような感覚に包まれます。

水鏡の庭に広がるわずかな揺らぎすら、
「無の豊かさ」を体感させてくれる。


建築を通して精神性へと誘われる、まさに“思想を歩く建築”でした。

② 谷口吉生 氏 設計
【谷口吉郎・吉生記念金沢建築館】
谷口親子の建築思想が静かに交差する空間。
日本建築が持つ「品」と「間」の美しさを、現代的な感性で丁寧に紡いだ建築です。
外観はあくまでも控えめ。
しかし内部に入ると、ディテールの精度、線の緊張感、
そして庭との絶妙な“間合い”が、心を落ち着かせてくれます。

窓枠はフレームとして機能し、
庭の風景が一幅の絵画のように切り取られ、
“建築が自然を借景し、自然が建築を引き立てる”
という谷口建築の核心が静かに息づいていました。


③ 仙田満 氏 設計【新石川県立図書館】
仙田満氏が生涯を通して追求してきた「こどものための環境」「人間中心の空間」
その思想が大人の知の場として成熟したかのような図書館。

アトリウムには柔らかな光が降り注ぎ、
立体的にめぐる書架は“知の地形”のように立ち上がり、
訪れる人を自然と歩かせる流れが生まれています。
「知の殿堂」でありながら、人のスケール感を大切にした温かい空間。
建築が“情報を読むための器”を超えて
“知性を育む風景”になっていることが印象的でした。


■ 岐阜・多治見
① 磯崎新 氏 設計【岐阜県現代陶磁器美術館】
(セラミックパークMINO)
磯崎新氏らしい、力強さと繊細さが共存した美術館。
周囲の山々の稜線と呼応するように建物が地形へ溶け込み、
まるで“風景の一部として建築がその場に生まれた”ように感じます。

内部では、光の取り込み方と素材の響かせ方が見事で、
陶磁器の陰影や肌理がより美しく際立つ展示構成に。

磯崎氏の思想である
「コンテクストを読み、建築が風景と対話すること」
その実践を強く感じる建築でした。


② 藤森照信 氏 設計【多治見市モザイクタイルミュージアム】
藤森建築特有の“土着性”と“遊び心”が全開の建築。
丘の斜面に積み上がった土の塊のような外観は、初見で心を奪われます。

内部はタイルという素材の物語を、
光・影・反射・肌理によって丁寧に語り直す空間。
展示品だけでなく、壁や床、階段の細部まで
“タイルという素材への敬意” が息づいています。
藤森氏の思想である
「自然素材と人間の手仕事の価値」
それがタイルの街・多治見の歴史と結びつき、
唯一無二のミュージアムをつくり出していました。



■ 旅を振り返って
金沢から多治見へと移動距離は決して短くありませんでしたが、
道中で見た山々の稜線、そして鮮やかな紅葉が、
旅そのものを美しい“背景”として支えてくれました。
建築を見る旅は、建築単体の鑑賞では完結しません。
そこへ至る風景、匂い、時間の流れ――
それらすべてが重なって初めて、建築は深く心に刻まれる。
そんな原点を思い起こさせてくれる一日でした。
次回の第三弾『京都~淡路』も、どうぞお楽しみに。
また新たな建築の姿と、日本の風景の美しさをお届けできればと思います。
